中小企業の求人票の書き方|構成テンプレート・NG例・明示が必要な項目
求人票は、候補者が最初に会社と出会う文書です。ところが中小企業の求人票は「募集職種・給与・勤務地」の3行で終わっていたり、逆に会社紹介ばかりで仕事の中身が書かれていなかったりします。この記事では、20〜300人の会社の採用担当・人事の方向けに、応募につながる求人票の構成テンプレート、項目ごとの書き方、避けたい NG 例、そして募集時に明示が必要な労働条件を整理します。法令に関する記述は厚生労働省の公表資料を根拠にした一般論で、個別の判断は専門家や最寄りの労働局へご確認ください。
求人票には、何を書けばよいですか?
求人票には「誰に・何を任せ・どんな条件で・どう働けるか」を、候補者が自分で判断できる粒度で書きます。会社が伝えたいことより、候補者が応募を決めるために必要な情報を優先します。
- 求人票(求人情報・募集要項)
- 労働者を募集するときに、仕事内容・労働条件・応募条件・選考方法などを求職者に示す文書。求人媒体への掲載原稿、自社の採用ページ、ハローワークへの求人申込書、人材紹介会社に渡す求人依頼書などの形をとる。労働者の募集を行う者には、職業安定法にもとづき労働条件の明示が求められる。
中小企業の求人票が弱くなる理由は2つあります。ひとつは、書く材料が採用担当の手元に無く、担当者だけで書くと「営業業務全般」のような抽象語になること。もうひとつは、大手の求人票を真似て規模や知名度で勝負しようとすること。中小企業の強みは、任せる範囲の広さ、経営者との距離、育成の丁寧さといった「具体的に書けること」にあり、それは現場に聞かなければ出てきません。
求人票の構成テンプレートは、どう組めばよいですか?
次の8項目を上から順に置くと、候補者が読む順番と判断する順番が一致します。媒体のフォーマットが違っても、項目の中身はこの8つに収まります。
| # | 項目 | 書く内容 | 書き方のポイント |
|---|---|---|---|
| 1 | タイトル(職種名) | 職種名+勤務地や働き方+任せる範囲 | 社内呼称ではなく求職者が検索する言葉。「◯◯(自社独自の役職名)」だけにしない |
| 2 | 仕事内容 | 主な業務、1日の流れ、最初に任せる範囲、チーム構成、教育・引き継ぎ | 「◯◯全般」を禁止し、動詞で書く。入社後3か月で何をするかが分かる粒度 |
| 3 | 応募条件 | 必須条件と歓迎条件を分ける | 必須は本当に無いと仕事ができないものだけ。経験年数には幅を持たせる |
| 4 | 雇用形態・契約期間・試用期間 | 正社員/契約社員など、期間の定め、更新の基準、試用期間の長さと条件 | 有期契約は更新の有無・判断基準・上限(通算期間または回数)を書く |
| 5 | 給与 | 基本給の下限〜上限、手当、固定残業代の有無と内訳、賞与・昇給の実績 | 「応相談」だけにしない。固定残業代は時間数・金額・超過分の扱いを明記 |
| 6 | 勤務時間・休日・時間外労働 | 始業・終業、休憩、休日、年間休日数、時間外労働の有無と平均 | 「残業少なめ」ではなく月平均の時間数。繁忙期があれば書く |
| 7 | 勤務地・働き方 | 雇入れ直後の就業場所、変更の範囲、リモート・ハイブリッドの可否と頻度 | 転勤の可能性は「変更の範囲」として書く。リモートは週何日かまで |
| 8 | 福利厚生・選考方法・募集者 | 加入保険、各種制度、受動喫煙防止措置、選考の流れと回数、会社名 | 選考回数と期間の目安を書くと応募の心理的な負担が下がる |
この表の4〜8は、募集時に明示が必要な労働条件と重なります。「魅力を書く部分」と「条件を正確に書く部分」を分けて考えると、書き漏れと誇張の両方を避けられます。
仕事内容は、どこまで具体的に書きますか?
「入社後3か月で、誰と、何を、どの範囲まで任されるか」が読み取れる粒度まで書きます。1日の流れとチーム構成を入れると、未経験者も経験者も自分の位置を想像できます。
書く前に、現場の責任者と入社1〜2年目の社員から材料を集めます。聞くことは「1日の流れ」「最初の1か月で任せること」「半年後に任せること」「繁忙期」「教える人は誰か」「この仕事で困ること」の6つです。抽象的な文と具体的な文の例を並べます。
- 抽象: 「営業業務全般をお任せします」 → 具体: 「既存顧客(約80社)への定期訪問と提案が業務の7割、新規開拓が3割です。入社後3か月は先輩と同行し、4か月目から担当を持ちます」
- 抽象: 「幅広い業務に携われます」 → 具体: 「経理(月次決算まで)を主に、労務の入退社手続きも兼ねます。経理部は3名で、決算は税理士と分担しています」
- 抽象: 「アットホームな職場です」 → 具体: 「開発チームは6名、平均年齢33歳。週1回の定例と、月1回の全社ランチ会があります」
給与・勤務条件は、どう書くと信頼されますか?
下限を明示し、内訳を分け、実績で語ります。「経験により優遇」「応相談」だけの求人票は、候補者が比較の土台に乗せられず、応募をためらう原因になります。
給与は「月給25万〜35万円(基本給+固定残業代◯時間分◯円を含む。超過分は別途支給)」のように、下限・上限・固定残業代の内訳・超過分の扱いをひとまとめに書きます。年収例は「入社3年目・28歳・年収420万円」のように、モデルを1〜2人分示すと想像しやすくなります。昇給・賞与は制度の有無だけでなく、直近の実績(年◯回、◯か月分など)を書けるなら書きます。
勤務時間と休日は、「残業少なめ」「有給取りやすい」といった形容ではなく、「時間外労働は月平均15時間」「年間休日120日」のように数字で書きます。数字が悪く見える場合でも、伏せると面接で聞かれたときに信頼を失います。繁忙期があるなら、その時期と程度を先に書いたほうが入社後のミスマッチが減ります。
2024年4月から、求人票に何が追加で必要になりましたか?
「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(上限を含む)」の3つが、募集時に明示すべき事項に追加されました。2024年(令和6年)4月1日施行の改正職業安定法施行規則によるものです。
厚生労働省の公表資料(公式サイト 2026年9月確認)によると、労働者の募集や職業紹介事業者への求人申込みの際に明示が必要な事項として、従来の業務内容・契約期間・試用期間・就業場所・就業時間・休憩時間・休日・時間外労働・賃金・加入保険・募集者の氏名または名称・受動喫煙防止措置などに加え、2024年4月1日から次の3つが追加されました。
- 従事すべき業務の変更の範囲 — 雇入れ直後の業務に加えて、将来変わりうる業務の範囲(例: 「(雇入れ直後)一般事務(変更の範囲)会社の定める業務」)
- 就業の場所の変更の範囲 — 雇入れ直後の就業場所に加えて、転勤や配置転換で変わりうる場所の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準 — 更新の有無、更新の判断基準、通算契約期間または更新回数の上限
同資料では、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合に「詳細は面談時にお伝えします」と付して一部を別のタイミングで示すことは可能とされていますが、その場合も原則として面接など求職者と最初に接触する時点までにすべての労働条件を明示する必要があり、選考の過程で当初の条件が変わる場合は速やかに変更内容を明示することとされています。求人票を媒体ごとに書き分けるときは、この「最初の接触までに全部そろう」状態を保てるように、自社の採用ページや ATS の求人情報を正本にしておくと管理が楽です。
また、候補者の適性・能力と関係のない事項(本籍・家族・思想など)を選考で尋ねないことは、厚生労働省「公正な採用選考の基本」(公式サイト 2026年9月確認)で示されている考え方です。求人票の応募条件にも、仕事に関係のない属性を持ち込まないように見直します。個別の記載方法は、最寄りの労働局・ハローワークや社会保険労務士にご確認ください。
避けたい NG 例は、どんなものですか?
「抽象語だけ」「条件の伏せ」「実態と違う魅力」「必須条件の盛りすぎ」「社内用語のまま」の5つです。どれも応募が減るか、入社後の早期離職につながります。
- 抽象語だけ: 「やりがいのある仕事」「成長できる環境」「風通しの良い社風」。候補者は判断材料を得られません。数字・事実・具体的な場面に置き換えます。
- 条件の伏せ: 給与「応相談」、残業「あり」だけ、休日「会社カレンダーによる」。比較の土台に乗らず、面接で聞かれて信頼を失います。
- 実態と違う魅力: 「残業ほぼなし」と書きながら実際は月30時間。入社後の早期離職と、口コミへの影響が最も大きい NG です。
- 必須条件の盛りすぎ: 「◯◯経験5年以上」「◯◯資格必須」を並べる。実際に無いと困るものだけを必須にし、あると助かるものは歓迎条件へ移します。
- 社内用語のまま: 独自の役職名や部署名、社内の略語。求職者が検索する言葉に直し、社内用語は本文の補足に留めます。
求人票を書いたあと、どう運用しますか?
求人票は1回書いて終わりではなく、応募数・書類通過率・面接での質問から見直す文書です。正本を1か所に置き、媒体別の原稿はそこから作ると、内容のずれと明示漏れを防げます。
運用の要点は3つです。第一に、求人票の正本を1か所(自社の採用ページや ATS の求人情報)に置き、媒体ごとの原稿はそこから短くします。別々の原稿を直していると、条件がずれたまま公開される事故が起きます。第二に、応募が来なければタイトルと仕事内容を、書類通過率が低ければ応募条件を、面接で同じ質問が繰り返されるならその答えを求人票に足す、というように数字と面接の会話から直します(採用の歩留まりを改善する)。第三に、掲載期間を決め、期限が来たら公開を止めて内容を見直します。
ChordOne ATS では、求人ごとに仕事内容・勤務地・雇用形態・給与レンジ・担当者を管理し、公開設定をオンにすると会社の公開求人ページと応募フォームが公開されます。掲載期間を設定すると期日で表示・非表示が切り替わり、採用媒体向け原稿の下書きは AI が支援します。求人票から書類選考の基準の案を提案する AI書類選考 も同じ求人情報から動くため、求人票を正本にする運用と相性がよい設計です。詳しくは 機能一覧 をご覧ください。
よくある質問
求人媒体ごとに求人票の内容を変えてもよいですか?
媒体の文字数や項目に合わせて長さを変えるのは問題ありませんが、給与・勤務時間・休日などの条件は全媒体で同じにします。スペースの都合で一部を省く場合は「詳細は面談時にお伝えします」のように別途明示する旨を付し、面接など最初の接触までに全条件を示すのが厚生労働省資料の考え方です。
給与の上限を書くと、高い額で応募が来て困りませんか?
上限を書かないと下限で判断され、応募の母数がむしろ減ります。上限には「◯◯の経験がある場合」のような条件を添え、モデル年収で実際の分布を示すと、期待値のずれを抑えられます。
未経験者向けと経験者向けで、求人票を分けるべきですか?
任せる仕事と教育の進め方が明確に違うなら分けたほうが、応募条件も給与レンジも書きやすくなります。同じ職種で分けるほどではない場合は、仕事内容の中で「経験者には」「未経験の方には」と段落を分けて書けば、1枚で両方に判断材料を渡せます。